西陣絣とは

西陣絣をご存知ですか?
あまり知られていない西陣絣についてご紹介します。


精緻で多彩な伝統工芸

西陣絣は伝統工芸である西陣織の一種で
先染めした糸を組み替えたり、ずらしたりして模様をつくりだす技法です。
絣の織物じたいは日本全国にありますが
西陣絣の特長は、経糸(たていと)をずらす経絣(たてがすり)であること。
華やかで精緻な色柄で
主に絣御召(かすりおめし)という着物に使われてきました。

絣職人の仕事……絣の経糸(たていと)ができるまで

西陣絣加工師の仕事は「絣をつくること」。

よく「絣を織る人」と間違われるのですが
糸を染めたり布を織ったりは
糸染め屋さんや織り屋さんの仕事です。

西陣織では織物づくりの工程がすべて分業で行われており
図案家や糸染業、整経業、綜絖業、整理加工業などの業者が
それぞれの工程を分担しているからです。

そのなかで、絣職人の仕事は多岐にわたるといえるでしょう。

1. 意匠を考える

どんな糸をどんな色で染めて、どう加工して柄をつくるか。
すべては職人の経験とアイデアから生み出されます。
西陣絣の職人は一人一人が織物デザイナーとしての役割を果たしています。

2. 糸を染める準備をする

計画したデザインにあわせ、糸を染める準備をします。
大枠に糸を巻き付けて防染の括りを施し
染屋さんに発注して糸を染めます。
糸のこと、染めのこと、絣のことはもちろん
織物全般のことを熟知していないとできない作業です。

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(写真:大枠に糸をはり、染める部分に印をつけます)

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(写真:染め上がった糸、大枠に巻いて乾燥させています)


3. 染め上がった糸を組み替える

染めあがった糸を1本1本数えて組み替えたり
ハシゴと呼ばれる西陣独特の道具でずらし経糸をつくります。
経糸の数は40センチ幅の布で、4000本以上になることも。
髪の毛より細く長い糸を、あやとりのように指にかけて作業していきます。

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(写真:染めていない白い糸と染まっている糸を一本一本入れ替えはめこんで、模様をつくります)


4. 染め上がった糸をずらしながら織り幅に巻き取る

巻き上げた経糸はそのまま手織りや機械の織機の経糸になり
織師によって織られて、布になります。

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(写真:入れ替えた糸を筬(おさ)にはめて巻き取る準備をします。巻き取るときに西陣絣独特の「はしご」という道具をつかって模様をずらします)

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(写真:「はしご」をかけてずらした後の様子。経糸(たていと)の完成です→巻き取って織屋(おりや)さんへ渡します)

心はずむ、すてきな絣布を……いとへんuniverseの布づくり

西陣絣の技術を次世代へつなぐ

先染めの糸が交差することで生まれる布地の深みある輝きは
やはり織物だけが持つ魅力です。

見るだけで心がはずみ、身につければさらに幸せな気持ちになる布。
いとへんuniverseでは、そんな西陣絣を皆様にお届けしたいと思っています。

また、昭和の最盛期には130軒はあったという西陣絣の加工所も現在は7軒のみ。
いとへんuniverseのメンバーである葛西郁子をのぞけば
あとの職人はすべて高齢者の方です。

西陣絣を伝え、多くの方にお届けして西陣絣を守り継ぐことも
わたしたちの大きな使命であると考えており
そのためにも和装だけでなく、洋服やインテリアなど
現代の暮らしになじむ布づくりを目指しています。

手織りこだわる理由

他の伝統産業と同様に、西陣織の世界でも
後継者不足が叫ばれています。

織物の工程を町全体で分業化していますので
途絶えてしまう技術が生まれると、生産工程が欠けてしまい
物がつくれなくなってしまいます。

いとへんuniverseでは、機械織のほか手織物にも力を入れており
小ロットの手織物をつくるなかで
デザイン、糸染め、絣加工、織り工程をすべて自分達で行っています。

手織物の風合いの良さを伝えるのはもちろんですが
自分たちですべての工程を行うことで
西陣に伝わる織物技術を継続できると考えているからです。