ライター白須のいとへん日記#7「KURA展:締と絣 ─京の職人たち」

ライター白須のいとへん日記#7「KURA展:締と絣 ─京の職人たち」

先週、遅まきながら柳馬場三条のISSEY MIYAKE KYOTOで開催している「KURA展:締と絣 ─京の職人たち」を観てきました。
ISSEY MIYAKE KYOTOの店奥には古い蔵があり、そこでISSEYのテキスタイルを形にしたふたりの京の職人を取り上げた展が行われています。
その「締と絣」のうち「絣」は、西陣絣のことで、いとへんuniverseメンバーの郁ちゃん(葛西郁子)が紹介されているのです。

蔵に入るなり目をひくのが、洋服を着た3体のマネキン。
一着のジャケットと、二着のパンツに、郁ちゃんが手がけた絣が使われていました。
その絣のカッコいいこと! 近づいたり離れたりしながら、しみじみと見惚れてしまいました。


南壁には仕事をしている郁ちゃんの写真。中央奥にあるモニターでは映像も流れています。
仕事場の雰囲気、仕事する手と糸の美しさ、そして等身大の彼女らしさまでをちゃんと捉えている、たいへん好ましい写真と映像でした。

いつもは着物や帯が中心なので、郁ちゃんは細いシルク糸で40cm幅の経糸づくりをしています。その姿はもう何度も見せてもらっています。
けれど今回は違う。シルクより太いコットンの糸で、しかも倍以上の1m幅の経糸です。太さも重さも桁違い。事実、映像のなかの郁ちゃんは、大蛇と格闘しているかように、全身で糸を操っていました。それは初めてみる凄まじい作業の様子でした。

それにシルクとコットンでは染料も違います。そのため、仕事の相棒ともいえる染め工場もかつてない挑戦になったそう。さまざまな工程でトラブルが起きて、今までにないような苦労を経験したそうです。
けれどそのかいがあって、素晴らしい絣の洋服が誕生していました。

蔵の北壁で紹介されているのは、「締」にあたる板締という技法で生地を染めた
京鹿の子絞りの重野和夫さん。
1935年生まれの大ベテランで、現在板締ができる数少ない職人さんなのだそう。
若い郁ちゃんとベテランの重野さんとがひとつの展で紹介されているのが、またいいですね。
2人が映像のなかで、表現はそれぞれでありながらも
「新しいことに挑戦できて刺激になった。いいものができて喜んでもらえて嬉しい」と、同じ意味合いのことを語っていたのが印象的でした。

この展を観て、他のメゾンも京都の工芸をもっと活用してくれたらいいな。
この展を観て、職人の格好良さに惹かれて、この世界に飛び込んでくれる若者が出てくればいいな。
素敵な絣の残像を抱いて蔵を後にしながら、そんなことを思いました。

「KURA展:締と絣 ─京の職人たち」は11月28日(水)までの開催です。
あと数日しかありませんが、未見の方はぜひ!